マイホーム計画 虎の巻「家づくりの常識?非常識?」
目次
「大黒柱を太く=耐震化」ではない
建物には建物自体の重さ(自重)に加えて、家具の重さや人の生活、地震の揺れ、風圧といったさまざまな力がかかります。大黒柱1本でこうした力をすべて受け止めるのは不可能。柱や梁、壁などが外からの力を均等に負担し、スムーズに基礎から地盤へ流すことが重要です。建物構造の強さを検証する科学的な方法に、「重心(建物の重さの中心)」と「剛心(建物の強さの中心)」のバランスを見るという方法があります。
重心と剛心の位置を求め、2つの位置が近ければ近いほど構造的に安定した家といえます。
木材住宅は耐震性に劣るというのはウソ
材料や構造による耐震性の序列は現実的ではありません。どの材料を使っても、耐震をどこまで考えてつくっているかによって、強度が変わってきます。ちなみに、平成12年以降の耐震基準を満たした木造住宅に対して、阪神大震災レベルの揺れを加えた実験では、倒壊しないという結果も得られています。
静岡県では耐震診断に補助金が出るので、現在の住まいに不安を抱えている人は一度、耐震診断をしてみるとよいでしょう。
在来軸組工法とツーバイフォーどちらが地震に強い?
建物が外からの力を受け止める方法として「架構式」と「壁式」の2つを挙げることができます。「架構式」は柱や梁などの部材によって構成するもので、木造住宅でいうと、在来軸組工法がこれに当たります。一方の「壁式」は壁や床の面によって構成され、木造住宅ではツーバイフォーがこのタイプ。
耐震性においてどちらが優れているかは一概にいえません。縦方向の力と横方向の力をバランスよく受け止め、うまく逃がすことがポイントで、構法云々よりも、きちんとした構造計算や確かな施工を重視すべきでしょう。
RC造で外断熱すると鬼に金棒?
鉄筋コンクリートは本来、熱しにくく冷めにくいという性質を持っています。真夏の太陽が照りつけても室内はそれほど暑くならず、冬は冷たい外気の影響を受けにくいのがメリットです。こうした本来の熱環境に外断熱を加えれば、快適性は大幅アップ。(ちなみにコンクリートは酸性雨で中性化し、中の鉄筋を錆びさせるので、鉄筋コンクリートの打ちっぱなしには不賛成)。
一方、鉄骨造の場合は、鉄骨が熱橋になってしまうので、内断熱ではなく、建物をすっぽり包む外断熱の方が適しています。
木造の場合は、木材がある程度の断熱性を持っており、内断熱が一般的ですが、外断熱にするとより快適になります。
世代を超えて住み継ぐには?
住まいの寿命を木造、RC造、鉄骨造で比較すると、甲乙付けがたいのが正直なところ。
例えば、木造では樹齢100年の木は100年もち、樹齢300年の木は300年もつといわれています。
ただし、住宅への価値基準が世代によって大きく異なるため、日本の住宅は30~35年で建替えられてきました。増改築は老朽化に伴う修繕以前に、家族構成やライフスタイルの変化を機に行われることが多いようです。
したがって、新築時に将来のリフォームを見越して家づくりをしておくことが大切といえるでしょう。躯体が丈夫なうえに、大空間や間仕切りの自由な設置が可能な鉄骨造やRC造なら、世代交代の際にも間取りをフレキシブルに変更できます。
こうした構造体と中身を分けた「スケルトン(構造躯体)& インフィル(内装・設備)」の考え方は、今後の家づくりのキーワードとなるはずです。
木材住宅が一番エコロジー?
リサイクルが進んでいるとはいえ、鉄筋、セメント、鉄骨の製造には膨大なCO2の排出が伴います。これに対して、森林資源を使った木造住宅は生産のためのエネルギーが少なくて済みます。
憂慮すべきは、コストを優先して、国産材を使わずに輸入材を使っていること。これは国産の小麦を余らせて、海外の小麦を食べているのと同じです。伐採、運搬、製材の点から見ても、地場の木で家を建てるのが最も省エネであることはいうまでもありません(静岡県では県産材を使うと補助金を受けられる制度があります)。
環境問題が叫ばれる今、太陽光発電や雨水利用、ディスポーザーの導入を検討することも大切ですが、住まいそのものが地球環境に負荷をかけていないかを考えたいものです。
都市計画区域内では、都市防災上の観点から建物の構造に制限が加えられる場合があり、用途地域とは別に「防火地域」と「準防火地域」が定められている。
「防火地域」は主に商業地域において指定される。この地域では地階を含む階数が3以上か、延べ面積が100m²を超える建物は耐火建築物とし、それ以外の小規模な建物についても耐火建築物もしくは準耐火建築物としなければならない。
要するに、防火地域内での建物は、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造などとし、小規模であっても(準耐火建築物に該当しない)一般の木造建物は禁止される。
「準防火地域」では、建物の規模に応じて、耐火建築物としなければならないもの、耐火建築物または準耐火建築物にするもの、木造建築物でもよいものが規定されている。準防火地域内で可能な一般木造建築物は、延べ面積が500m²までで、かつ3階建て以下となっている。
この場合も主要構造部や延焼の恐れのある部分などについては、防火の基準が細かく定められている。
編集協力 静岡情報通信