浜松市沿岸部 地価の下落に歯止めかかるか!? 防潮堤整備計画 最新レポート
津波を確実に抑えるための試験施工が進行中!
山村氏は続けた。「これだけの規模の津波対策建造物は、誰も経験したことがありません。ですから現在は年度内完成を目指して試験施工を行っています。場所を2か所設定してい るのは、地盤の状態が違うからです。地盤が弱い場所では、地盤改良や土台の作り方など特別に配慮する必要が出てくるからです」
さらに試験施工では、徹底的な検証が行われるという。防潮堤は、CSGによる台形の構造となる。CSGとは、”Cemented Sand and Gravel”「セメントで固めた砂礫(されき)」の意味。この方式は、材質の優劣に関係なく骨材を使用することができるため、経済的に大きなメリットがあるという。
「防潮堤は津波に絶えるものでなければなりません。巨大な力が一方向から一気にかかるわけですから、弱い躯体では潰れてしまいます。潰れないで津波の力に耐えなければ 防潮堤の役割を果たせません。そのためにはセメントの強度が要求されます。ですから試験施工では、設計の検証や施工ノウハウの蓄積はもちろん、セメント材料の検証や品質管理のやり方まで徹底的にデータを収集して、分析・検証します。すべてが未知の領域ですから実際に作って経験値を貯えていくことが最も需要なんです」と話す。
現場はまだ施工が始まった段階だが、すでにCSGの検証は行われている。セメント量と水分量を様々な数値で組み合わせ、最適な割合を探るため実験が繰り返されているという。
計画期間は2014年度から2023年度までの10年間。試験施工につづいて来年4月以降から本体工事に掛かる予定だ。
試験施工(その1)
天竜川〜馬込川ブロック内 延長250m
試験施工(その2)
凧揚げ会場〜浜名バイパスブロック内 延長550m
植樹活動など防潮堤整備を市民参加で実施
これだけ大規模な建造物。計画から完成後の維持管理について山村氏は「防潮堤の維持と市民生活との融和は、重要な問題です。そのために市民参加の仕組みを作りながら進めています」という。
事業を進めていくにあたって、検討が必要な課題ごとに三つの検討委員会を設けた。景観・利用・防災の問題は「景観デザイン検討委員会」、動物・植物などの問題は「自然環境検討委員会」、保安林内植栽計画は「植栽計画検討委員会」がそれぞれ議論して対応を導き出す。この委員会には、市民の代表だけでなく学識経験者も参加する。第一回会議では、基本的な方針について共通認識が持たれた。特に植栽計画については、地域住民が参加しての「植樹活動」も行われているという。
材料搬入・混合工(水+セメント+CSG母材)イメージ
災害から人命を守る国土強靭化基本法が成立
12月4日の参院本会議では防災・減災等に資するための「国土強靭化基本法」や「南海トラフ地震対策特別措置法」「首都直下地震対策特別措置法」が成立した。今後は大規模な自然災害などに対する国土強靭化に向けた取り組みが一気に加速するに違いない。国土強靭化基本法が後押しとなって、地方自治体や民間などとも連携して防潮堤の整備が進み、安心した市民生活が送れる日が訪れることを期待したい。
防潮堤の整備に伴う減災効果の比較(浜松市/浸水面積:ha)
○浸水区域の減少!
・「宅地」の浸水面積を約7割低減
○浸水深の減少!
・「宅地」の浸水深2m以上を97%低減
※浜松市沿岸域防潮堤整備推進協議会【説明資料】より
編集協力 静岡情報通信