売買契約と留意点
買主様が売買契約で確認すべきポイント
売主様と不動産の売買契約を結ぶ前に契約の内容をしっかりと理解しておく必要があります。また、契約締結時に支払う手付金についても知っておきましょう。
ここでは、売買契約書の確認ポイントや手付金の性質をまとめました。
売買契約書の確認
契約書を事前に取り寄せましょう
売買契約書と重要事項説明書の素案は不動産会社によって契約締結の数日前には作成されています。可能であれば不動産会社に依頼して素案を取り寄せてください。最初に、契約書に自分の希望が反映されていることや、物件引き渡しなどのスケジュールに問題がないことを確認しましょう。
売買契約書には売主様と買主様の間で交わされる約束事がまとめられています。確認すべき主なポイントは次の通りです。
不動産の特定(どの不動産のどの範囲が対象か)
契約書には売買の目的物が表示されています。物件の詳細、地番、地目、面積などに目を通し、取引対象範囲に間違いがないことを確認してください。
売買価格
売買価格や支払い方法を確認しましょう。消費税がかかる場合は税額が明記されています。
解除条件
詳細は後ほど述べますが、契約書には契約解除についての取り決めも書かれています。解除期限にも注意しておきましょう。
契約不適合責任(民法改正前は瑕疵担保責任)
欠陥や不具合があった場合の対応についても確認すべきです。
契約書、重要事項説明書に不明点や修正してほしい点があれば、不動産会社に事前に連絡するようにしましょう。契約を結ぶ当日に内容の変更を依頼すると、修正後にあらためて契約の場を設けることになります。
※民法改正(法務省HP)2020年4月1日から施行された改正民法(債券法)ではこれまでの「瑕疵(かし)」という曖昧な表現がなくなり、「契約不適合」に変更されました。
また、改正前民法では買主がとり得る手段は契約解除と損害賠償のみでしたが改正後は追完請求や代金減額請求ができることが明記されました。
手付金とは
売買契約を結ぶときに買主様から売主様へ支払うのが手付金です。手付金は契約成立の証拠になるもので、売買代金の一部に充てられます。ただし、買主様の都合で解約することになった場合は放棄しなければなりません。
手付金の金額は物件価格の5~10%が目安です。10%(未完成物件の場合は5%)または1000万円を超える場合は金融機関や保証会社による保全措置を取ることになっています。
契約の解除
売買契約を交わした後に、様々な理由からやむを得ず契約の解除をしなければならない場合もあります。
売買契約書の契約解除条項を確認する際は、解除条件や解除期日、解除する場合の対応を押さえましょう。
手付解除
買主様が手付金を放棄するか、売主様が手付金を倍返しすることによって、契約を解除することができます。ただし、手付解除できるのは相手方が契約の履行に着手する前です。履行に着手したとされる例としては、買主様が中間金・残金の支払いをしたときや、売主様が売却のために土地の分筆を登記したときなどがあります。
手付解除ができる期日を決めておくケースもあります。その期日を過ぎてから契約をキャンセルする場合、手付金の放棄だけでなく違約金を支払うことになります。
住宅ローン特約による解除
買主様が住宅ローンの審査に通らなかった場合、融資利用の特約(ローン特約)の期限内であれば、手付金の放棄や違約金の支払いをすることなく契約を解除できます。
住宅ローン特約が売買契約書や重要事項説明書に記載されていることを確認しましょう。
契約違反による解除
こちらが契約の履行に着手しているにもかかわらず、相手方が契約上の義務を果たさないときは、契約を解除できます。例えば、相手方が登記や売買代金の支払いに応じないときなどです。
解除の前には一定の期間を設け、相手方が義務を履行するように催告します。それでも履行されないときには書面で通知することで違約による解除ができます。
2020年4月1日に施行された改正民法では催告なしで契約解除が認められる場合が明文化されました。例えば、相手方が契約上の義務を履行しない意思を明確に表示したときなどです。
契約不適合責任による解除
改正前の民法では、買主様が注意を払ったにもかかわらず、見つけられなかった欠陥を隠れた瑕疵と呼んでいました。
隠れた瑕疵があった場合、売主様はその欠陥や不具合について保証しなければならない瑕疵担保責任を負っていました。瑕疵があった場合、買主様は損害賠償請求や契約解除ができることがありました。
民法の改正により、「瑕疵」という言葉は「契約不適合」に置き換えられました。
契約不適合、つまり契約の内容に適合しないものを引き渡した売主様は契約上の義務を果たしていない(債務不履行)ことになります。その場合、売主様に故意・過失がなかったとしても、債務不履行による契約解除が認められることがあります。
さらに、売主様に故意・過失があれば違約責任による損害賠償が認められることもあります。
具体的には、このようなケースが考えられます。中古の建物が売買され、その建物に雨漏りやシロアリの害などの契約不適合があったとします。この場合、買主様は売主様に対し、補修を請求できます。補修を請求しても売主様が応じない場合、代金の減額を請求できます。契約不適合によって、そもそも建物を買った意味がないときには、契約の解除ができます。
建物の滅失・損傷による契約解除
売買契約書には通常、危険負担について記載されています。
売買契約の締結から引渡しまでの間に、物件が地震、台風のように売主様と買主様のどちらの責任とも言えない理由で滅失したり、壊れて使用できなくなったりした場合、その損害に対しどちらが責任を負うかという問題が、危険負担です。
改正前の民法では買主様が責任を負うことが原則になっていたため、不動産の売買契約では特約によって売主様負担とすることが通例でした。
民法改正によって売主様負担が原則となりましたが、売買契約書には引き続き危険負担の項目が設けられています。
その項目の中で、物件の修復が不可能、著しく困難なときは契約を解除できると記載するのが一般的です。その場合、売主様はすでに受領した手付金を無利息で買主様に返還しなければなりません。