築50年の一戸建てでも売却は可能なのか
築50年のような一戸建ての売却を検討している方の中には、以下のような不安を抱えている方もいるのではないでしょうか。
- 古い家は敬遠されるのではないか
- 古い家を売却すると、後にトラブルにつながるのではないか
築50年の物件でも売却は可能です。ただし物件によっては後にトラブルにつながる可能性があります。
本記事では、家を売却する前にチェックするべきポイントを解説しています。本記事で解説しているポイントをチェックしてから売却すると、売却後のトラブルを避けることが可能です。
古い住宅の売却に不安を抱えている方は、ご一読ください。
建物の耐用年数
国は、建物の用途・構造ごとに耐用年数を定めています。耐用年数とは、国が決めている資産ごとの使用可能年数です。
資産ごとの耐用年数は、国税庁が公表している「主な減価償却資産の耐用年数」に記載されています。例えば木造住宅の耐用年数は22年です。
ただし耐用年数は、実際に使用できる年数よりも短く設定されていることが一般的です。木造住宅の例でいうと、築22年以上使用されている住宅が数多くあります。
家の価値を決める7つのチェックポイント
築年数は、家の価値を決める上で重要な要素です。ただし、築年数だけで家の価値は決まりません。築年数以外にも家の価値を決める7つのチェックポイントを解説します。
Point.1 雨漏りしていないか
まずは雨漏りしていないか確認しましょう。一般的な雨漏りのパターンは以下の3つです。
- 屋根からの浸水
- 外壁からの浸水
- 窓から雨水が吹き込む
売却後に雨漏りしていた事実が明らかになると、契約不適合責任を問われるケースもあります。
契約不適合責任とは、契約に引き渡した物件が種類・品質に関して契約内容に反するものである場合に生じる売主側の責任です。
わかりやすく説明すると、買主が雨漏りをしていると認識していないで購入した場合、売主側は下記いずれか、または複数の要求を受け入れなければなりません。
追完請求 | 例:雨漏りの修理 |
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代金減額請求 | 例:売却金額の減額 |
損害賠償請求 | 例:雨漏りによって買主に生じた損害の賠償 |
契約解除請求 | 例:売買契約自体をなかったことにする |
雨漏りを隠して高値で売却できても、後に修理費用の負担や契約解除に応じることになりかねません。そのため売却前に雨漏り箇所を修理するか、雨漏りしている事実を買主に伝えましょう。
Point.2 外壁に亀裂など入っていないか
外壁に亀裂やひび割れが生じていないか確認しましょう。亀裂やひび割れの状況によっては、売却価格が大きく下がります。
近年は地震への警戒感が高まっており、耐久面で外壁の亀裂やひび割れを気にする方は多いです。そのため、亀裂やひび割れの補修を行っている方が早期に売却ができます。素人が補修を行うと亀裂やひび割れが再発する可能性が高いため、補修はプロに任せましょう。
Point.3 シロアリはいないか
シロアリが基礎の木材を食い荒らしていないか確認しましょう。シロアリから被害を受けた住宅は、耐久性が下がります。最悪の場合倒壊する恐れがあるため、売却前にはプロによる診断を受けるのがおすすめです。
シロアリの被害報告せずに売却すると、雨漏り同様に契約不適合責任を問われる可能性があります。
また現在は対応済みであっても、過去にシロアリ被害に対する修繕を行った場合も報告するようにしましょう。
Point.4 排水管・水回りの状態はよいか
一戸建ての売却では、特に排水管・水回りの状態確認が重要です。給水管・水回りは経年で劣化します。排水管・水回りが以下の状態ならば確実に修理しましょう。
- 水が詰まって流れない
- 水圧が弱い
- 排水溝から異臭がする
また水まわりは家の印象を決める重要なポイントです。きれいな水回りの方が買主からの評価は高いため、売却前には掃除をしておきましょう。
Point.5 傾きはないか
耐震を確認する上で、住宅に傾きがないか確認しましょう。傾いている住宅には、主に下記3つのデメリットがあります。
- 地震・台風が原因で倒壊する可能性が高い
- 外壁に亀裂やひび割れが生じる
- 窓が歪み開閉が困難になる
- 壁に隙間が生じて雨水が侵入しやすくなる
そのため「高値で売却したい」「契約不適合責任を問われたくない」と、考える方は傾きを修繕してから売却するのがおすすめです。
ただし傾きを修繕する工事には、100万円以上かかるケースが多いです。修繕をする前には、下記の二つを比較してどちらが総合的に得をするのか検証しましょう。
- 住宅の傾きを直す修繕費
- 住宅が傾いていることによる値引き額
Point.6 基礎部分はしっかりしているか
基礎部分に問題がないかの確認も重要です。国土交通省が公表している「既存住宅インスペクション・ガイドライン」では、基礎のコンクリートが以下の状態になっていると、検査対象になるとしています。
- 幅0.5mm以上のひび割れ
- 深さ20mm以上の欠損が生じている
基礎がしっかりしていないと、地震で倒壊しやすくなるだけでなく、値引き交渉の材料とされやすいです。後のトラブルや高値で売却したい方は、基礎の確認・修繕を行ってから売却しましょう。
Point.7 地盤が安定しているか
トラブルを避けるために、「地盤が安定しているか」も確認しましょう。地盤が弱いと住宅が傾き・沈みが生じやすく、倒壊のリスクが高まります。
中古住宅の地盤調査は、法律上必要ありません。ただし震度5に耐えられない土地は地盤に弱いとされているため、売却時には不動産会社・買主に報告しましょう。
建物診断を行う
建物診断(ホームインスペクション)を行うと、売却価格が高められるため、売却後のトラブルも防止できる可能性が高まります。しかし、建物診断は買主側で行うのが一般的です。
ただ築50年のような築年数の古い物件は、売却後に契約不適合責任を問われるリスクがあるため、建物診断を売主側で行うのがおすすめです。
建物診断を行うと、修繕が必要な劣化や住宅の不具合が明らかになります。建物診断を怠り、売却後に買主によって修繕が必要な箇所が発見されると、トラブルになる可能性が高いです。
事前に売主側で建物診断を行い、修繕が必要な箇所の把握をしておくとトラブルを回避できるでしょう。
必ず不動産会社に報告
建物診断の結果、修繕が必要な箇所や修繕工事が終わっている箇所については、必ず不動産会社に報告しましょう。不動産会社は買主に対して、住宅の瑕疵を報告する義務があります。
住宅の瑕疵を説明せずに売却すると、不動産会社に責任が問われる可能性があります。
リフォームや更地にする危険性
築50年のような古い住宅は見栄えが気になり、売却活動が長引くのではと考え、リフォームや更地にした後売却しようとする方もいます。
安易なリフォーム、住宅を解体して更地にする危険性を下記2つ解説します。
- リフォームしても家屋が不要な場合もある
- 更地にすると固定資産税が高くなる
買主のニーズには、下記のようにさまざまです。
- 自分好みにリフォームしたい
- 注文住宅建設のために土地だけを欲している
買主のニーズに合わないところにお金をかけても、売却活動では意味がありません。お金をかけてリフォームや更地にする場合は、これから説明する危険性を理解した上で行いましょう。
リフォームしても家屋が不要な場合もある
先述したようにリフォームを行っても、買主が現在の家屋を不要としているケースがあります。またリフォーム内容が買主の好みに合わず、売却価格の増額につながらないことも珍しくありません。
工事費以上に売却価格が上昇しないと、リフォームを行う意味がありません。リフォームを行う場合は、不動産会社などに確認の上、ニーズの高いリフォームを行うようにしましょう。
更地にすると固定資産税が高くなる
更地であれば汎用性が高いため売れやすいのではないかと考える方が多いです。実際に更地は汎用性が高く売りやすいです。一方で更地には、固定資産税が高くなるデメリットもあります。
更地にしてもすぐに売却できるのであれば問題ありません。しかし売却活動が長引いてしまうと、負担が重くのしかかります。
建物がある土地は特例が適用されており、200㎡以下の部分は固定資産税が1/6、都市計画税が1/3に軽減されています。
一方で建物を解体して更地にしてしまうと固定資産が6倍、都市計画税は3倍に上昇してしまうためすぐに売却できないと、維持費の負担が大変です。
更地にするのは「すぐに売却できる」と、自信がある場合だけにしましょう。
古民家として売却できるのか
築50年のように古い一戸建ては「古民家」として高く売却できるのではないかと考えられる方もいらっしゃるかと思います。しかし、築年数が古いからといって全ての一戸建てが古民家として売却できるというわけではありません。どのような中古住宅が古民家として扱われるのかご紹介します。
古民家の定義
古民家には明確な定義がありません。一般社団法人全国古民家再生協会による古民家の定義は、「昭和25年の建築基準法の制定時に既に建築されていた伝統的建造物の住宅、すなわち伝統構法によって作られた建物のこと」とされています。
【参考】一般社団法人 全国古民家再生協会:古民家の定義について
古民家として売却できる一戸建ての特徴
古民家として売却するためには具体的にどのような伝統構法なのか、その特徴についてご紹介します。
伝統構法の特徴の1つが、日本伝統の工法である木造軸組み構法で建築されされているものです。台所などの木材が腐りやすい箇所では欅や栗の木などが使用され、強度が求めれる梁の部分では松が使用されます。そして、内装などには美しい木目の杉を使うなどされています。(現在の木造住宅ではコストを抑えるため国外の木材を使用することがよくあります。)
こうして建築された古民家は長寿命なものも多く、200〜300年残っているものもあります。
そのため、古民家の価値は高く評価され注目を集めています。もし、築50年以上の一戸建ての売却を考えられた場合は不動産会社に相談して古民家に値するか見てもらいましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。人それぞれ一戸建ての購入目的が違います。築50年の一戸建てだとしても安く購入したい方もいらっしゃれば、土地が欲しいため購入される方もいます。売却を検討される際はまず建物と土地の状況を確認し、必要に応じて修繕を行いましょう。建物が不要な場合もありますので、リフォームや修繕に費用をかけすぎないようにしましょう。
適切に不動産を売却したい場合は土地と戸建の両方を取り扱っている不動産会社に相談することをおすすめします。