2017年どうなる? 静岡県西部不動産市場
国土交通省が発表した2016年上半期の新築住宅戸数は、前年同期比5.2%増の46万3469戸と2年連続で増加。相続税の負担軽減策としての貸家需要が押し上げた結果とはいえ、景気はゆるやかな回復基調にある。一方、静岡県内の基準地価の平均変動率は全用途で8年連続の下落となったが(2016年7月1日現在)、2013年以降は下落幅が縮小し、利便性の高い地域は上昇が続くなど、二極化が進んでいる。近年の動向を分析し、2017年の不動産市場を予測する新春特集。濵松不動産鑑定株式会社の不動産鑑定士、中村進一郎さんにうかがった。
浜松市の住宅地の単価と総額は18年前の資産デフレ期の水準に
国土交通省が発表した2016年7月1日現在の都道府県地価(基準地価)によると、静岡県内の平均変動率は8年連続で下落。住宅地1.1%、商業地0.7%、工業地0.7%のマイナスだった。中心市街地では上昇傾向が見られる一方で、郊外や沿岸部は下落傾向が続き、二極化がさらに加速している。
濵松不動産鑑定が作成した「住宅地価格の推移(浜松市の平均モデル)」(表A)を見ると、2016年度の3.3㎡あたりの価格は280,000円、1画地(62坪)の価格は1,736万円とマイナス2%の変動率を示している。中村さんは「2014年度から1坪あたりの価格が300,000円を割り、現在の単価と総額は約18年前の水準に戻った」という。18年前といえば、毎年、住宅地の価格が5~7%程度下落していた資産デフレ期で、1997年は消費税が3%から5%へ引き上げられた年だ。その後、2011年の東日本大震災によって津波の脅威が全国の沿岸部へ波及し、高台需要が鮮明となった。「住宅地の地価動向」(表B)を見ると、2016年12月時点で、上昇は20%、横ばいは50%、下落は30%。これを踏まえて中村さんに、2017年の地価の見通し(表C)を区別に立ててもらった。「中区にニーズが集中し、東区、北区、浜北区は少し上昇。対して、西区と南区は下落が続きそう。自然災害の危険性が低く、生活利便性が高い駅沿線が人気ですね」と中村さん。二極化と並んで、好立地エリアに商業や住宅の需要が集中するコンパクトシティー化が見受けられる。
■ 住宅地価格の推移(浜松市の平均モデル)(表A)
資料提供:濱松不動産鑑定
■ 浜松市/住宅地の価格動向(表B)
■ 2017年: 浜松市の地価の見通し(表C)
自然災害の危険性が低く、生活利便性の高い、中区、東区、北区、浜北区は上昇か!?
年々厳しくなる消費者の選別眼 景気眺めから購入の先延ばしも
では、「沿線別宅地価格」(図1)を細かく見ていこう。まず、浜松市内。好調の中区にあって、とりわけ取引の多いエリアは幸、上島、富塚町だ。
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「賃貸住宅の入居者が戸建てを検討する際、お子さんの学区を変えたくないことから、同地区で住まいを探す傾向にあり、これらのエリアが善戦しているのはその表れでしょう。東区の筆頭は来年夏に会員制大型量販店『コストコ』の出店がイトーヨーカドー跡地(上西町)に予定されている宮竹町周辺、西区は価格が高くても売れる大平台に安定感があり、北区は三方原町で取引が目立ちます。
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一方、浜北区は貴布祢や横須賀といった鉄道沿線の中心部が人気。浜北区役所が『なゆた浜北』へ移り、大規模宅地造成による生徒数の増加から、浜松市立浜名中学校では平成30年4月供用開始を目指して校舎移転改築が行われます。当エリアは人口増加による動きが顕著ですね」生活環境と地盤がよく、交通至便な沿線は強含みという中村さん。年々、消費者の選別眼が厳しくなり、景気眺めから購入を先延ばしする傾向が見られると分析する。また、職場が移転する関係で、北への志向にも拍車がかかる。
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都田地区では約50社が集う「都田テクノポリス」に加え、「都田地区工業用地」に地元大手メーカーが新工場を建設中。さらにその北側に「第三都田地区工業用地」(約200ha)を整備しており、今年度から一部分譲開始が予定されている。これに連動して「きらりタウン浜北」や半田山の人気も上昇していて、今後、浜松市内の人口分布は南から北へ比重が移りそうだ。
編集協力 静岡情報通信