2012年春 不動産売買市場動向を探る!

公開日時: 更新日時:
静岡県浜松市の住宅需要が増加している人気エリアをご紹介します。地価の低迷、新築物件の価格低下に連動した中古住宅の値ごろ感、史上最低の住宅ローン金利など今が住宅購入のチャンスと考えられます。

東日本大震災から1年。静岡県でも安心・安全に暮らしたいという思いが強まっている。高台志向が高まり、海に面した西部では沿岸部の平地に暮らす人々は危機感を募らせている。地価低迷や住宅ローン金利の低さなど購入希望者への追い風要素も多い状況となっている。

最新の不動産売買状況と浜松市内で不動産事業を営む6社の動向を伺った。

東日本大震災から1年が経ち、安全なわが家で安心して暮らしたいという思いがますます強まっている。
リーマンショック以来の所得縮小傾向や、法制化に向けて動き出した消費税アップなど、住宅購入希望者にとっては慎重にならざるを得ない側面はあるものの、地価の低迷、新築物件の価格低下に連動した中古住宅の値ごろ感、史上最低の住宅ローン金利など追い風となる要素も多い。
最近の不動産売買状況を把握し、購入にあたっての参考とすべく、浜松市内で不動産事業を展開する6社に最近の動向を聞いた。

土地

震災以降、高台志向が強まる。 浜松市内では浜北エリア

地盤に加えて、津波を警戒。低地から高台へ需要が移る。

まず、土地の動きから見ていこう。昨年3月11日に発生した東日本大震災は衝撃的な津波被害の映像とともに住宅地図を塗り替えた。海に面した静岡県西部も他人事ではなく、沿岸部の平地に暮らす人々は危機感を募らせている。スカイポート株式会社の大村雅一さんは次のように指摘する。

「高台エリアを中心に事業展開する当店では前年同月より約3割、新規来店客が増えています。震災以降、高台で探したいという要望が目立ち、高丘、葵、幸、泉、初生、三方原などが人気です。地盤もさることながら津波を怖れ、海だけでなく川沿いを警戒する人も。

震災以降、注目が集まる浜松高台エリア
震災以降、注目が集まる浜松高台エリア

昨年は、他地域でもゲリラ豪雨で川が氾濫するなど深刻な水害もありましたから、低地から高台へという動きはうなずけます。ただ、需要が地価を押し上げるといった現象は見られず、区画あたり1,000万円~1,300万円で推移。供給は昨年の春先に比べるといく分減っています」

これに対して南部は取引が激減している。買い手が付かないうえに、手放したいという土地オーナーの声も少なくない。
静岡セキスイハイム不動産株式会社の今井弘明さんは次のように説明する。「震災直後、土地オーナーさんからの査定依頼が増加しました。沿岸部の土地を紹介しても買い手の反応は鈍く、売る方も半ばあきらめています。一方、JR浜松駅の北側は軒並み好調。磐田、袋井、掛川も同様で、JRの線路より北側、国道1号より南側で動きが見られます。また、若い世代を中心に、従来からの市街地よりも新しく誕生した街に住みたいというニーズが高まっており、街並みが形成されたJR愛野駅周辺などが人気。立地条件だけでなく、移り住んだ後の生活や近所付き合いまで考えて検討する方が増えているようです」
袋井市の土地購入情報はこちら

街づくりを視野に数十区画をまとめて分譲する新しい大型分譲地は自治会のしばりがゆるく、街並みもフレッシュ。袋井市久能に誕生した『サンフィールド中久能』(全41区画)や浜北区の『シンフォニータウン貴布祢』(全56区画)などはいずれも好調な滑り出しを見せている。

昨年12月の分譲開始から好調な動きをみせる 「サンフィールド中久能(袋井市)」
昨年12月の分譲開始から好調な動きをみせる
「サンフィールド中久能(袋井市)
JR愛野駅の南に広がる袋井市愛野区画整理地の街並み
JR愛野駅の南に広がる袋井市愛野区画整理地の街並み

インフラ整備が進む浜北エリア。遠鉄沿線の西側がホットスポット。

学齢期の子どもを持つ家庭では、学区を変えずに土地や家を探す人が多い。遠州鉄道株式会社浜松東不動産営業所の小笠原弘樹さんは「浜松市東区はエリアが広い割に、ピンポイントで探すお客様が大半。和田、蒲、与進など、お子さんの学区内で家を建てたいとお考えの方が目立ちます。坪単価はここ数年変わらず、JR天竜川駅近くで35万円前後、蒲と与進は30万円ぐらいでしょうか。土地面積は標準で50坪前後ですが、建物にかかる費用を含めて総額で検討すると50坪では予算を超えてしまうため、売主が面積を40坪程度に小さくして売り出すケースが増えています。東区は駅西の広沢、山手、蜆塚に比べると、JR浜松駅からの距離は同程度なのに価格が手頃。ショッピングセンターも多く、ファミリーには人気のエリアです」と語る。
浜松市中央区の土地購入情報はこちら

さらに目立った動きが見られるのが浜北エリアだ。
浜松市では浜北区を副都心にという計画の下、インフラ整備が進行中。浜松赤十字病院が移転したり、金融機関の支店が拠点を変えたりして街の再編成が加速している。
浜北エリアの動向に詳しい有限会社西遠土地建物センターの木俣純一さんに聞いた。「遠州鉄道の駅から徒歩10分~15分の線路西側がホットスポット。もともと浜北は天竜や水窪に住んでいた人たちが利便性を求めて移り住んだ場所です。高度成長期から数十年、この流れは変わりません。

今年1月より分譲を開始した「シンフォニータウン貴布祢」
今年1月より分譲を開始した「シンフォニータウン貴布祢」

市町村合併をきっかけに役所勤めの若年層が山間部から街に出て来たこともあり、北からの流入に拍車がかかりました。これに加え、最近では南区や西区の沿岸部からの移転を望むご家族も増えている。お子さんの学区を変えてまで浜北にという人気ぶりに驚いています。一方、浜北から市中心部へという人口流出は新幹線利用者など稀なケースを除いてほとんど見られません。インフラが整備され、『サンストリート浜北』や『プレ葉ウォーク浜北』といった大型ショッピングセンターができたのをきっかけに街が活気付き、市中心部へのアクセスには車と電車の両方が使える交通利便性も大きな魅力となっています」

高まる人気にも関わらず、価格の高騰は観測されず、横ばいで推移している点にも注目したい。
現在、貴布祢で分譲中の『シンフォニータウン貴布祢』は1,380万円台~1,980万円台。建物込みの購入予算を考慮すると、ボリュームゾーンは1,500万円前後で、売主は区画面積を小さくして販売価格を抑えている。木俣さんは続ける。

「市中心部から移り住む人は、自分で手を入れなくてもそのまま暮らせる整備が行き届いた新興分譲地を好みます。何でもそろう大型ショッピングセンターに近いという立地的なメリットもありますが、『シンフォニータウン貴布祢』はその典型。これに対して、山間部から出て来る人は土地面積や自然環境を重視。暮らす場所が変わっても、これまで住んでいた環境やライフスタイルはそう変えられるものではありません。価格は押しなべて手が届きやすい範囲に落ち着いている。というのも、縁辺価格に引っ張られて市街化区域の価格を上げづらいという背景があるからです」

このほか、価格が弱含みの西美薗や『きらりタウン浜北』、土地区画整理事業で道路整備が進む中瀬、新東名高速道路の開通による人と車の流れの変化にも注目。県西部で一番元気な浜北エリアから目が離せない。
浜松市浜名区の土地購入情報はこちら

新東名高速道路の浜北インター(浜北市中瀬)方面へ開通した国道152号線(浜北区新原)
新東名高速道路の浜北インター(浜北市中瀬)方面
へ開通した国道152号線(浜北区新原)
新東名「浜北インターチェンジ」の入口付近
新東名「浜北インターチェンジ」の入口付近

大規模既存集落を買うなら早めに手を打つのが得策。

合併に伴い、平成21年4月に施行された浜松市の「市街地縁辺集落制度」と「大規模既存集落制度」。
この制度によって市街化調整区域内での自己用住宅の規制が緩和され、それまで市場に出ることがなかった農地が売り出された。

縁辺集落は三方原、浜名、積志、笠井、長上、入野、可美、江西、新津、白脇の各地区に指定されており、道路幅員、下水道利用など一定の要件を満たせばだれでも専用住宅・併用住宅・共同住宅を建設できるとあって、当初は大いに注目された。 スカイポートの大村さんは「少し前までポツポツ供給されていましたが、現在はひとしおついた感じ。今後、以前ほどの供給は期待できないでしょう」と語る。

もう一方の「大規模既存集落」についてはどうだろうか。これは、市街化調整区域に長年居住している人またはその子で、持家がなく世帯を有している人に限って、居住している連合自治会区の中にある大規模既存集落内の土地に自己用住宅を建築できるという制度。

浜松市内で大規模既存集落農地の仲介を幅広く手がける株式会社ランドリンクの前川卓市さんは次のように説明する。
「農業従事者の高齢化や後継者不足で農地を手放さざるを得ない人が増え、大規模既存集落内の農地を売却したいという要望が増えています。また、同制度の周知につれて、購入側の認知度も次第に上がってきました。ただ、大規模既存集落内に家を建てる際には諸々の複雑な手続きが必要であることを忘れてはいけません。特に大規模既存集落内の農地の多くが農業振興区域内の農地、通称、青地農地(法律で定められた農業を振興する農地で、原則転用できない)で除外申請を伴うため、なおさら時間がかかり、一般の土地を買う時のようにトントン拍子にはいかないことを知っておくべきです」

大規模既存集落(一般集落)の分布図 <浜松市ホームページより>
大規模既存集落(一般集落)の分布図
<浜松市ホームページより>

前川さんによると、申請から許可が下りて新居に引っ越すまでに1年~1年半かかるケースもあるという。また、一見、数多く存在するように見える大規模既存集落内の土地もピンポイントで分析すると、住宅地として利用できる土地はそれほど多くない。
前川さんは続ける。「農地転用を厳しく制限する国の方針を受けて、除外申請の許可が厳しくなっている。農地を手放したい売り手、一般宅地より割安感のある土地を求める買い手はそろっているのに、青地農地の場合は、許可が下りる土地が限られるため、見た目ほどいい土地は少ない。消費税アップが議論されている今、申請して所有権を得るまでに時間がかかることを考慮すると、少しでもいいなと思ったら即検討していくというのが鉄則ではないでしょうか」

長年、その土地に住んでいる人しか対象にならない大規模既存集落制度。地域の現状は熟知しているだけに、生きた近隣情報を早めに入手して、できるだけ迅速に決断するのが得策のようだ。

編集協力 静岡情報通信

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