不動産売買はするべきことが多い!引き渡しまでにしておきたい準備
目次
売買契約を締結してから引き渡しまでにやるべきこと
マンションや一戸建ての不動産売買契約を締結してから引き渡しまでに、売主様にはたくさんのやるべきことがあります。 ここでは契約から引き渡しまでの流れと注意点をまとめました。スムーズな売却を実現するため、参考にしてみてください。
物件の引き渡し日
引き渡し日には売買対象の物件を買主様に引き渡し、売却代金を受け取ります。これを決済日とも呼びます。引き渡し日は売買契約書に記載されています。 売却によって得たお金で住み替え物件を購入する売主様も多いため、引き渡し日は引っ越しなどの予定も考慮して買主様側と相談して決めます。一般的には売買契約の1~3ヶ月後に引き渡し日を設定することが多くなっています。
売主様が住み替えを予定している場合、希望する家がすぐに見つからない事態も想定されます。しかし、そのような理由で引き渡し日に物件を引き渡せなくなれば、契約で約束した義務を履行しなかったとして、債務不履行による損害賠償責任を問われかねません。引き渡し日は少し余裕を持たせて設定することをお勧めします。
引き渡し日までにやるべきこと
売買契約の締結後は、引き渡しと決済をスムーズに行うための準備をすることになります。 決済とは売買契約を完結することです。決済に必要な書類を整えるためには時間がかかる恐れもあるため、不動産会社の担当者から早めに説明を受け、速やかに動けるようにしましょう。 引き渡し日には必要書類の受け渡しも行います。実測の図面や付帯設備の保証書・取扱説明書などを準備しておきましょう。引き渡しと決済についてわからないことがあれば、不動産会社に問い合わせて確認しておくとよいでしょう。 なお、後述の住宅ローン特約があるため、決済の準備に入るのは買主様の住宅ローンの審査が通ってからで問題ありません。
売主様は次のようなことを行う必要があります。
- 売主様が住宅ローンを借り入れている銀行への連絡
- 受領・支払金銭の確認
- 住民票や印鑑証明書、固定資産税価額証明書など必要書類の用意
- カギなどの確認
- 権利証の確認
- 管理組合への連絡と届出(マンションの場合)
- 引っ越しの手配
一般的には売買契約が正式に締結される前から金融機関と相談を進めます。マンションの売却代金で住宅ローンの残債を一括返済し、抵当権を抹消する流れについて確認しておきます。
買主様から受領する金額のほか、不動産会社に支払う仲介手数料をはじめとした様々な費用について確認しておきます。
決済時に買主様に引き渡すものには、カギや設備の説明書、マンション管理組合の総会資料などがあります。カギと主な書類は買主様に直接手渡します。合カギもすべてそろえることを忘れないようにしましょう。
権利証をなくしたときは
マンションや一戸建ての所有権を登記したとき、登記所から発行してもらうのが権利証(権利書、登記識別情報)です。権利証は再発行できないため、権利証が見当たらない場合は司法書士に相談し、権利証に代わる本人確認を依頼しましょう。 間違いのないスムーズな決済を行うためにも権利証は早めに確認し、可能であれば司法書士にチェックしてもらうとよいでしょう。
登記の準備
不動産の売却では司法書士に各種登記手続きを依頼することになります。また、金融機関との事前の打ち合わせも重要です。
抵当権抹消登記
売却する物件の住宅ローンに残債がある場合、売却で得たお金でローンを一括返済する手続きについて、金融機関と日程などを調整しなくてはなりません。住宅ローンの完済を受けて抵当権を抹消する登記についても、不動産会社の担当者を通して司法書士と連携し、準備を進めましょう。
所有権移転登記
不動産の売買契約を締結したら、不動産会社の担当者を通して司法書士に依頼し、所有権移転登記の準備をします。 契約の締結から引き渡し日までは通常、それほど時間がないため、なるべく早く依頼するようにしましょう。 登記の手続きは司法書士の資格がなくても制度上は可能です。しかし、専門知識や経験がない素人にとっては難しい手続きであるため、司法書士に報酬を支払って頼むのが無難です。
敷地の測量
土地には公簿売買と実測売買があります。売買契約で土地が実測売買とされているなら、不動産の引き渡し前に敷地の測量をする必要があります。
公簿売買
公簿売買では売買契約書に
「本物件の売買対象の面積は表記の面積とし、実測面積との差異が生じたとしても、売主・買主は売買代金の増減請求その他、何らの異議を申し立てない」
と記載されます。これは、契約書の面積と後から測量した面積が異なっていても、価格は変わらないという意味です。昔からある宅地や農地を転用した分譲地では、公簿売買の場合があります。
実測売買
実測売買とは、売買契約後に実際に測量した面積に基づいて土地を売買することです。売買価格は測量の結果に基づいて決定されます。 敷地の測量は測量士や土地家屋調査士といった専門家に依頼します。測量では境界を確認するために近隣住民の立ち合いが必要です。そのため、測量士や土地家屋調査士だけでなく近隣住民とも日程を調整しなければなりません。
また、土地の測量をしない場合であっても土地の境界を確認する必要があります。あいまいな境界は隣接する土地の所有者とのトラブルの原因になりますので、境界の確認が難しい場合は土地家屋調査士に現地調査を依頼することになります。
なお、「登記簿の面積により売買を行い、後に実測した面積との差異を精算する」という実測売買と公簿売買の併用売買もあります。 土地の売買を検討するときは不動産会社の担当者に実測売買、公簿売買、併用売買の別を確認しておきましょう。
建物の解体
建物が古く価値がない場合や、建物が残っているために土地の利用に支障がある場合には、売主様が建物を解体して更地にした上で買主様に引き渡すケースもあります。当然、引き渡し日までに土地を更地にしなければなりません。 天候不順や、土地の形状などが原因で解体工事に日数がかかることも考えられます。不動産会社の担当者を通して解体業者に早めに依頼し、余裕をもって解体工事を完了できるようにしましょう。
住宅ローン特約に注意
買主様が住宅ローンを利用して購入する場合、不動産売買契約には住宅ローン特約が盛り込まれます。 住宅ローン特約とは買主様が住宅ローンの審査に通らない場合、契約を白紙撤回できるというものです。住宅ローン特約には期間が設定されます。 売主様の立場から見れば、買主様のローン審査が出るまで待ったあげく、審査に通らなかったときには売却活動をやり直さなければならないわけですから、住宅ローン特約の期間は短いに越したことはありません。 さきほど「決済の準備に入るのは買主様の住宅ローンの審査が通ってから」と述べたのも、住宅ローン特約があるためです。 同様に、買主様のローン審査が通らないうちは建物の解体にも着手しないようにしましょう。
引っ越しの準備
売主様は引き渡し日より前に物件から退去しておく必要があります。原則として物件を完全な空き家にして引き渡します。 年度末などの引っ越しシーズンには引っ越し会社の手配が難しくなります。引き渡し日に合わせるため料金が割高な日時に引っ越しをしなくても済むよう、引っ越し会社に早めに予約を入れるようにしましょう。
また、売主様が物件を賃貸に出しているなら、賃借人の退去が売買契約の条件とされるのが一般的です。賃借人が無理なく退去できるように早めに日程を調整してください。
売主様は引き渡し日まで物件を管理する
売主様は売買契約を締結した後も引き渡し日までは、責任を持って物件を管理しなければなりません。物件に関わる税金や光熱費なども引き渡し日までは売主様が負担することになります。
天災地変で引き渡しができなくなった場合
ほとんどの売買契約書の書式では、落雷が原因の火災など天災地変によって物件の引き渡しができなくなった場合、買主様は契約を解除できるという規定が入っています。つまり、そのようなケースでは売主様は売買代金を受け取ることができません。
改正前の民法では、解除を認められるのは売主様に「責めに帰すべき事由」があったときでした。しかし民法の改正によって、売主様の過失がなくても買主様は契約を解除できることになりました。 例えば、売買契約を結んだ物件が隣家からのもらい火で消失してしまったような場合でも、改正された民法では、買主様から契約の解除ができるとしています。
しっかりと準備して引き渡し日に備える
売買契約を締結した一戸建てやマンションをスムーズに引き渡すためには、引き渡し日を見据えて着実に準備しなければなりません。引き渡しの完了までは売主様が責任を持って物件を管理することも忘れないようにしましょう。 準備の段取りは不動産会社の担当者が案内してくれますので、売主様は大きな流れを頭に入れておき、担当者の案内に従って動いてください。余裕があれば手続きの流れをシミュレーションし、注意点をおさらいしておきましょう。