アイアンショックとは?今後の見通しと住宅価格への影響

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アイアンショックとは?今後の見通しと住宅価格への影響

アイアンショックは鉄の不足により、鉄の価格が高騰することです。住宅の建築資材には鉄が多く使われるため、鉄の価格高騰は住宅建築コストにも大きく影響します。住宅購入を検討されている方は、以下のような不安を抱いているはずです。

  • 住宅購入のタイミングはいつが良いか
  • アイアンショックが収束する見込みはあるのか
  • アイアンショック以外で、住宅建築コストが高くなる要因はあるのか

本記事では、アイアンショックの概要や原因、今後の見通しと住宅価格への影響、住宅購入のタイミングを解説します。

住宅購入費用が最も安いタイミングで住宅を買いたい方、今後の住宅価格の動向を理解してから購入を検討したい方は参考にしてください。

アイアンショックとは

アイアンショックとは

アイアンショック(Iron Shock)とは、鉄の不足で建築資材である鉄筋・鉄鋼の価格が高騰することです。

1973年10月に中東の産油国の原油価格70%引き上げが原因で燃料価格が高騰した「オイル・ショック」になぞらえて、「アイアンショック」と名付けられました。

住宅を建築する際は強度を高めるため、柱や梁に鉄筋を骨組みとして使用して構成しています。

鉄筋コンクリート造のマンションのみならず、一戸建ての住宅なども鉄骨が使用されており、鉄の価格高騰の影響は住宅市場にまで及びます。

アイアンショックが起こる原因

アイアンショックが起こる原因

アイアンショックが起きる原因は、簡単にいえば鉄鉱石の需要が供給を上回ったためです。

新型コロナウィルスの影響で一度は鉄の需要は減り、労働人口を削減せざるを得ない状況に追い込まれました。

しかし、コロナウィルスから経済も回復傾向にあり、特にアメリカと中国で鉄の需要が増加したため、鉄鉱石の採掘が需要に間に合わなくなっています。

供給が需要を上回れば当然鉄資源の価格が高騰し、経済力のある国が資源を購入してしまい、さらに鉄鉱石が不足する状況になるでしょう。

日本の地質は比較的若く、鉄鉱石の採取に適していないため、その100%を輸入に依存しています。

輸入に頼らざるを得ない状況にもかかわらず資源価格が高騰し、日本が価格競争で負けてしまったため輸入量が減り、さらに国内の鉄筋・鉄骨価格が上昇する悪循環が起きている状態です。

【参考】 わが国の暮らしと輸入依存率

アイアンショックの今後の見通し

アイアンショックの今後の見通し

2008年にも鉄骨の金額が高騰していますが、その際はリーマンショックにより鉄の価格が下落しています。
今回のアイアンショックも同じように下がるとは言い切れない状態であるものの、現時点では2023年1月より鉄の価格は下がっている状態です。

一般社団法人 日本鉄リサイクル工業会によるデータによると、鉄価格は2023年1月より5万円台を維持していましたが、4月には48,000円台(関東)に下がり、2023年6月時点まで緩やかに下落しています。

アメリカ・中国のインフレの影響で、鋼材需要が低調になり価格が落ちたことが原因です。

しかし、世界的に見ても鉄の価格はまだ高いうえ、日本は円安傾向であるため、輸入量が即座に増え鉄骨が短期的に安くなる見込みは立っていないといえます。

アイアンショックによる住宅価格への影響

アイアンショックによる住宅価格への影響

建材に鉄を原材料とする鉄骨や鉄筋が含まれる以上、アイアンショックによる住宅価格が上昇する可能性はあるでしょう。

鉄の価格高騰以外にも、世界情勢などの影響でガソリンや木材の価格も上昇傾向で、建築コストは上がっています。

住宅メーカーは原材料高騰を鑑みて、なるべく広告コストや経費、利益を削って住宅価格が上がらないように企業努力している状態です。

このまま原材料の高騰が続けば、企業努力だけでは住宅メーカーの経営継続自体が難しくなってしまいます。

そのため、今後の状況次第ではアイアンショックを原因として住宅価格が上がる可能性は十分にあるでしょう。

アイアンショックが落ち着くまで住宅購入は待つべき?

アイアンショックが落ち着くまで住宅購入は待つべき?

日本の鉄の輸入量が短期間で増える見込みはまだ立っていませんが、世界的に見れば鉄の価格は落ち着いてきています。

先ほど解説したとおり、世界的なインフレによって鉄需要が低下して、価格が下落し始めているためです。

しかし、一度上昇した価格が元の水準に戻るにはまだ時間がかかるでしょう。

とはいえ、住宅購入をアイアンショックが完全に落ち着くまで待つことは得策ではありません。

住宅価格を高騰させる要因はアイアンショック以外にもあり、それ以外の要因で住宅価格がさらに上がる可能性があるためです。

アイアンショック以外で住宅価格が高騰する要因を解説します。

ロシア・ウクライナ情勢による影響

2022年2月より始まったロシアのウクライナへの軍事侵攻で、世界情勢はまだ不安定です。

ロシアへの経済制裁の一環で、ロシアからの石油・天然ガスの輸入量は制限されています。

そのため燃料価格が高騰しており、輸送や生産ラインのコストがかかり、原材料が高騰する要因となっています。

ロシア・ウクライナ情勢はまだ収束の見込みも経っておらず、今後どう展開するかわからない状態です。

そのため、完璧にロシアからの原材料輸入がストップすればさらに原油価格が上がり、住宅価格が高騰する可能性もあるでしょう。

世界的な人口増加による需要増

日本は人口が減少の一途を辿っていますが、世界的には人口が増えています。

人口が多い国の産業は活性化するため資源需要が高くなり、人口が多い国へ資源が流れるでしょう。

世界人口の流れと逆方向に進んでいる日本は、今後資源が輸入しづらくなる可能性があります。

輸入時の価格競争に負けてしまい、日本に入ってくる資材が少なくなれば建材が高騰し、住宅価格も比例して高くなるでしょう。

日本・アメリカで異なる金融政策

アメリカは2021年から2022年にかけて、高いインフレ率を記録しました。

新型コロナウィルス、そしてロシア・ウクライナ情勢の影響による外食産業の利用率の低下や早期退職者の増加、労働力の減少による物不足など、複合的な要因が関係しています。

しかし、2022年11月にはアメリカ経済はインフレが収束傾向になりました。

アメリカは定期的に金利の引き上げをおこない、物価が過剰に上昇しないように調整してるためです。

一方で日本は異例の低金利時代と言われており、金利の引き上げはしない方針です。

金利が低ければ低い金利で資金調達が可能となり、企業が融資を受けて設備投資しやすくなるという考えに基づいています。

法人・個人が資金調達をして経済活動をおこなうことで、景気を上向かせる作用を期待しての政策です。

【参考】 金融政策は景気や物価にどのように影響を及ぼすのですか?

日本銀行は金利を低く維持する方針ですが、アメリカが金利を上げるほど日本円の価値は下がります。

日本円を持っているよりもアメリカドルを持っている方が金利がつくため、資産運用を考える方は円を売り、ドルを買うからです。

日本銀行は金融緩和を維持し、低金利を保つ方針を発表しているため、しばらく円安は続くでしょう。

円安が続けば当然輸入にかかるコストが高くなるため、建材の輸入量が減少し、住宅購入コストは高くなる可能性があります。

住宅購入のタイミング

アイアンショックにおける住宅購入のタイミング

今後、アイアンショックのみならず石油や木材など、建築材料に使われる資源の高騰が予想されます。

住宅購入を検討している方は、いつ購入すれば良いか迷っているでしょう。

結論からいえば、住宅購入はご自分のタイミングで購入することをおすすめします。また、住宅ローンの観点でいえば、金利の安い今は絶好のチャンスです。

ライフスタイルでタイミングを決める

住宅の購入は結婚や出産などの家族が増えるタイミング、金銭に余裕ができて家を持ちたいと思った時、また都心から郊外へ移住するなど、ご自身のライフスタイルに合わせて決めましょう。

資金に余裕があれば住宅購入を見送る理由はなく、返済も問題なくできるためです。

理想の住宅や土地はタイミングを逃すと手に入らないこともあるため、欲しいタイミングで購入すると良いでしょう。

もちろん住宅購入費用はよく検討すべきですが、仮にアイアンショックが収束しても、ほかの要因で住宅建築コストが高騰する可能性もあります。

万が一今の水準よりも住宅建築コストが上がれば、「あの時買っていればよかった」と後悔するかもしれません。

今後の建材コスト上昇のリスクも考えて、ご自身のタイミングで、必要な時に家の購入を検討すると良いでしょう。

低金利のうちに住宅を購入

住宅ローンの観点で考えると、35年固定の住宅ローンが1%台と低金利なうちに住宅購入を検討した方が良いかもしれません。

1990年代に始まった不況を抜け出すための超低金利政策の影響で、日本の住宅ローン金利はほぼ変動がなく低い金利を維持しています。

現時点での金利を考えると、金利が低いうちに住宅ローンを組んで購入に踏み切ることも考え方のひとつです。

住宅ローンには、元利均等方式の変動金利の場合は適用金利が上がったとしても5年間は毎月の返済額が変わらない「5年ルール」と、5年経過後の返済額上限は従前の125%までとされる「125%ルール」があるため、急に返済額が増えることはありませんが、現在の金利水準がこのまま維持されるとは限りません。

日本銀行の植田新総裁は、低金利政策自体は支持するものの、異次元の低金利政策には難色を示していました。

そのため、日本銀行の方針変更によって住宅ローンの金利は上がる可能性があります。

長期ローンを組んだ場合には、金利上昇で住宅ローンの金利も上がる点に注意してください。融資金額によっては数百万円単位の金利がかかります。

住宅ローンの金利額、金利タイプによって金利上昇の影響度合いは大きく変わるため、よく検討してからローンを組みましょう。

金利タイプの詳細については、住宅ローンの金利タイプを解説している記事をご参考ください。

まとめ

「アイアンショック」による鉄価格の高騰は、住宅建築コストに大きな影響を及ぼしています。しかし、鉄価格がいつ下がるかは現時点では不明です。

さらに、現在の低金利状況も将来的には変わる可能性があります。また、ロシア・ウクライナ情勢や世界的な人口増加など、住宅価格を高騰させる他の要因も存在します。

これらの不確定要素を考慮すると、住宅購入の最適なタイミングは個々のライフスタイルや金融状況によるところが大きいです。

したがって、住宅購入は自身のタイミングに合わせて検討することが重要となります。

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