2014年静岡県西部不動産市場を予測
静岡県西部の中心地、浜松市中区では、昨年12月時点で住宅地の価格が軒並み上昇し、値上がりと横ばいを合わせると96%の地点が上昇に転じた。浜松市郊外や周辺市町への波及はこれからだが、「土地価格は底をついた」と見てよい状況だ。リーマンショック以来、低迷が続いていた不動産市場は、2012年秋からの株高に伴い、じわりと回復の兆しを見せ始めている。2013年7月時点の都道府県地価調査(基準地価)では、東京など三大都市圏の地価が5年ぶりに上昇し、首都圏での不動産取引が活発化している。2013年の動向をふり返り、2014年の不動産市場を予測するこの特集。濱松不動産鑑定株式会社の不動産鑑定士、中村進一郎さんにうかがった。
アベノミクス、東京五輪など、景気回復への好材料がそろう。
安倍晋三内閣発足から1年以上が経過し、アベノミクスへの期待から景気の不透明感が拭われつつある。リーマンショック以来、低迷が続いていた不動産市場は、2012年秋からの株高に伴って回復の兆しを見せ始めた。2013年7月時点の都道府県地価調査(基準地価)では、東京など三大都市圏の地価が5年ぶりに上昇。景気先行きに対するセンチメントが改善するとともに、低金利や不動産の割安感もあって不動産取引が活発化している。
また、首都圏では新築マンション市場も好調だ。不動産経済研究所の調べによると、首都圏の2013年マンション供給戸数は前年比22.8%増の5万6000戸と2007年以来の高水準。契約戸数も昨年11月までで約3万8000戸と、過去5年の年間合計を上回っている。相続対策に伴う富裕層の億ションを買う動きも目立ち、海外からの引き合いも強まっている。こうした需要を背景に、新築分譲マンション市場では都心好立地の物件に人気が集中。これまで以上に用地取得競争が激しさを増すと同時に、東北の震災復興事業や公共工事の増加で建築資材価格が上昇し、建設業の人手が足りないという、うれしい悲鳴も聞かれる。
首都圏と地方では実態が異なるが、アベノミクスによる脱デフレ政策で不動産価格に先高期待が強まり、消費増税もあって買い手の購買意欲が高まっていることは確か。東京五輪招致という明るいニュースも追い風となり、長らく停滞していた日本経済の霧がようやく晴れそうな2014年。今年は不動産市場始動の年といえそうだ。
浜松市中区は71%が上昇。市街化区域は底をついた。
濱松不動産鑑定株式会社が取引価格をもとに作成した資料(図1)を見ると、浜松市中区における地価が軒並み好調であることがわかる。
中村さんは次のように説明する。「広沢、山手の高級住宅地はもとより、鴨江、など、依然として逆風もあります」。市街化区域が底をついたのに対し、市街化調整区域や縁辺集落の住宅地では幸、遠州鉄道沿線などで値上がりしています。中区で値下がりした地点は神田町のみ。中区の住宅地の価格動向を2012年12月と2013年12月で比べると(表A)、値上がり地点は前年の23%から71%へ、横ばい地点は19%から25%へ推移しています。値上がり地点は実に3倍にもなり、中区の市街化区域に限っていえば、住宅地の価格は底をついたと見てよいでしょう」
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資料提供:濱松不動産鑑定
値上がりと横ばいを合わせると96%におよび、景気回復の兆しが感じられるが、必ずしも取引につながっていないと中村さんは指摘する。「住宅地の売れ行きは2013年7月から悪化しています。これは価格目線のギャップが原因で、不動産価格が上がっても所得が増えないため、購入側が行動を起こさないからです。今後も地価や金利が極端に上昇することはないと考えて買い急がない、予算が厳しいため無理しない、せっかく買うのなら自然環境に恵まれた高台を手に入れたいなど、現実的で冷静な心理がうかがえます。実際、地価が急上昇しているわけではなく、物価が下がっているので相対的に地価が上がっているという認識。人口世帯の減少や工場進出の伸び悩みまだ下がる見込みがあり、取引市場では様子見の傾向が続きそうだ。
住宅地の価格動向(表A)
編集協力 静岡情報通信