2014年静岡県西部不動産市場を予測
市内郊外への波及はこれから。場所によっては好調の地点も。
続いて中区以外の浜松市内と周辺市町を見てみよう。
まず、東区は全体的に市況が弱く、市街化調整区域よりも低価格で購入できる縁辺集落に人気が集まっている。西区は大平台が上昇しているのみで、他は弱含み。南区は東日本大震災の発生以来、津波の懸念が払拭されず、取引が鈍っている。
こうした中、いよいよ本格化した浜松市沿岸部の防潮堤計画。天竜川から今切口までの17.5kmにわたり高さ13mの防潮堤を築き、被害想定レベル2(発生頻度は極めて低いが、発生すれば甚大な被害をもたらす規模)の地震によって起こる津波被害を未然に防ぐのが目的だ。防潮堤整備事業によって南区の地価下落に歯止めがかかるのだろうか。「東日本大震災発生以来、海岸、河川付近、海抜の低い地域は奮わず、不動産業者も仕入れを避ける傾向にあります。防潮堤計画が現実化し、一服感はありますが、防潮堤が完成すれば絶対に大丈夫という確証はありません。東日本大震災での津波被害の衝撃は大きく、約20年前に発生した阪神・淡路大震災の恐怖が今なお語り継がれていることを考えても、沿岸部に暮らす人々の脳裏に根強く残ることでしょう」と中村さん。南区は浜松市の中でも白砂青松の自然が美しい地域。住む人、訪れる人の安全をしっかりと確保し、海と共生する方法を考えていかなければならない。
一方、浜北区や北区はあい変わらず低調で、目立った動きが見られない。中村さんは続ける。「新東名高速道路が一部共用開始となり、浜松浜北IC、浜松いなさIC、浜松いなさ北ICと北の玄関口が新たに生まれ、三方原にスマートICをつくろうという話もあります。確かにアクセスはよくなりましたが、これらが不動産市場にどう関係してくるかは未知数。それよりも私は、北区都田町で計画されている新産業集積エリア、都田工業用地(50ha)に注目しています。浜松市は2015年度に用地買収、2016年度から造成・分譲を目指しており、優良企業が進出して雇用が増えれば、周辺の不動産市場も活気づくことでしょう」
さて、周辺市町に目を向けると、磐田市では岩井と西貝塚の区画整理地内が善戦しているのに対し、見附や富士見町といった旧来のエリアはほとんど取引が見られない。掛川市はほぼ横ばいで、湖西市は大手企業の工場が集中する新所原以外は低調。同市の高台は不動産業者が買いたがっているが、売主が手放さないという。また、袋井市は南北で二極化していると中村さんは言う。「南部は売地が多いのに引き合いがなく、流通性が下がっています。対して国道1号より北側の久能や月見の里などは好調。ここから森町にかけては売りやすい状況ですね」。同じ市内でもポイント的に違いが見られ、きめ細かい情報収集が必要だ。
編集協力 静岡情報通信