ひとつ屋根の下で、心地よく暮らす。理想的な二世帯住宅のつくり方

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近年、二世帯住宅を選択する人が増加する一方で「プライバシーが保てない」「生活音が気になる」などの不安要素もある。失敗しない二世帯住宅をつくる為には、日常生活の細かいことを疎かにせず、一つひとつ両世帯が合意してプランニング段階から協力し合うことが大切である。

親世帯、子世帯がひとつ屋根の下で暮らす二世帯同居。
互いの気遣いやライフスタイルの違いなど、かつては懸念されていたことも二世帯住宅の進化とともに解決し、ストレスなく快適に暮らせるようになった。
また、自然災害や犯罪が多発している昨今では、「子どもだけを家に残して外出するのが心配」という声も多く、安全・安心を重視して二世帯同居を選択する人が増えている。
親の所有地に建てれば土地を購入する必要がなく、子育てや家事を助け合いながら、みんなで幸せを共有できる二世帯住宅。
メリットを知り、家族構成やニーズに合った理想の二世帯住宅を考えようと、大和ハウス工業株式会社・浜松支店の村上武司さんにお話をうかがった。

大和ハウス工業株式会社[浜松支店] 村上武司さん

子から親に持ちかけるケースが多い。安全・安心を考えて核家族から卒業。

気兼ねなくのびのびと暮らしたいという思いから、これまで敬遠されてきた二世帯同居。しかし、最近は二世帯住宅を検討する人が徐々に増え、ダイワハウスではこれからの二世帯住宅のあり方を積極的に提案している。まず、最近の傾向を村上さんに聞いた。

「お問い合わせいただく子世帯の年齢層は30代半ばが中心。結婚してアパートで暮らしていたけれど、お子さんが生まれ、そろそろマイホームをと考える年代です。従来なら土地を探して購入し、自分たちだけの住まいを計画するところですが、近年では親世帯と同居する二世帯住宅が有力な選択肢となっています。ほとんどの方が親御さん所有の土地に新築するため、土地購入の手間と資金を省くことができ、無理して買った狭い土地に窮屈な家を建てるより、ゆとりを持ってプランニングできるのも利点のひとつです」

Q. 同居の提案者は? A. 「子世帯から」が半数以上

親世帯と子世帯がともに暮らす二世帯住宅は両世帯合意のもとに初めて成り立つ。では、どちらから同居を持ちかけるケースが多いのだろうか。

「老後の不安などから親世帯が望むパターンを想像しがちですが、意外にも子世帯から声をかける場合が多いですね。自然災害や犯罪が多発している近年、小さな子どもに留守を任せるのが心配とか、夫婦共働きで家事や子育てに手が回らないといった理由から、安全性や安心面を重視して二世帯同居に踏み切る方が目立ちます。これは非常に現実的な考え方で、デメリットよりもメリットに着目するプラス思考がうかがえます。30代夫婦の親御さんといえば50代、60代とまだ若く、お孫さんの面倒を見たり、家事をサポートしたりすることもできます。おじいちゃん、おばあちゃんにしてみれば、かわいいお孫さんと接する時間が増え、生活にハリが生まれる。親の躾がとかく厳しさ一辺倒になりがちな中、ゆったりと大らかな愛情で包んでくれる祖父母の存在はお子さんの成長に好影響を与えるはずです」

このほかにも、「だれかが病気になった時、互いに支え合える」「子どもにお年寄りへの思いやりの心が芽生える」「近所付き合いや文化・習慣を伝えることができる」など、メリットは少なくない。

データで見る今時の二世帯同居。親世帯は「絆」、子世帯は「安心」。

ダイワハウスが実施した二世帯住宅調査の結果を見せてもらった。まず、「二世帯の家族構成」は「息子同居」が69.9%と圧倒的に多い。日本では長男が家を継ぐという風習が残り、同居が絶対視されている地域もある。その一方で、少子化によって娘だけの家庭が増え、娘同居も以前より増加。夫婦どちらの親と一緒に暮らすかは個々の事情によるが、二世帯同居への抵抗感は全体的に薄らいでいるようだ。

続いて「同居した理由(複数回答)」を見ると、「急病時にも安心だから」が45.9%と最多で、「防犯面で安心だから(34.1%)」「子世帯の子育て支援のため(33.5%)」が上位を占めている。女性の社会進出で共働き世帯が増加し、家事や育児など子世帯に対する支援から二世帯同居を選ぶケースが目立つ。これ以外には、「住宅(土地)の取得費用を抑えるため(31.6%)」「子世帯の家計支援のため(27.5%)」「子世帯の家事支援のため(25.4%)」などが挙げられ、子世帯だけで家庭を切り盛りする大変さがうかがわれる。

Q. 二世帯の家族構成は? A. 「息子同居」が、まだ多数 【同居した理由】 [1位]急病時にも安心だから 45.9% [2位]防犯面で安心だから 34.1% [3位]子世帯の子育て支援のため 33.5%

【同居のメリット】<親世帯> [1位]にぎやかで楽しい 75.7% [2位]孫の成長を見られる 71.4% [3位]急病時における安心感 69.4% <子世帯> [1位]急病時における安心感 72.0% [2位]防犯面での安心感 65.5% [3位]孫の成長を見せられる 58.1%

こうした支援重視の傾向は「同居のメリット(複数回答)」を聞いた回答にも表れている。親世帯の上位3位は「にぎやかで楽しい(75.7%)」「孫の成長を見られる(71.4%)」「急病時における安心感(69.4%)」。子世帯の上位3位は「急病時における安心感(72.0%)」「防犯面での安心感(65.5%)」「孫の成長を見せられる(58.1%)」。親世帯では「世帯間の交流ができる(62.1%)」という意見も上位に入り、夫婦二人だけで暮らすより、子どもや孫とにぎやかな毎日を過ごしたいといった思いが見て取れる。

さらに、庭の手入れや重い荷物の運搬など、高齢者では骨が折れる力仕事を息子や婿が手伝ったり、孫の将来の教育資金を貯めるべく、家計の一部を親世帯が補助したりと、二世帯同居ならではの利点は少なくない。体力面、精神面、金銭面で依存し過ぎるのは禁物だが、それぞれの気持ちと生活サイクルを尊重すれば、二世帯同居は理にかなった暮らし方といえそうだ。

二世帯同居の理由には急病時や防犯面での安心に続き、共働き世帯の子育て支援など双方に利点があり、理にかなった暮らしといえます。

二世帯住宅の3つのスタイル。日常生活の分析から始めよう。

メリットを抽出してきたが、ここでデメリットにも目を向けておこう。同社の調査で「同居のデメリット(複数回答)」を聞いたところ、親世帯の1位は「生活音が気になる(35.9%)」、2位は「プライバシーが保てない(35.4%)」、3位は「収納が少ない(31.1%)」。子世帯の1位は「プライバシーが保てない(61.7%)」、2位は「友人や知人を呼びにくい(57.8%)」、3位は「生活音が気になる(44.8%)」。いずれも間取りや仕様で解決できるもので、村上さんは次のようにコメントする。

「プライバシーの確保は昔も今も変わらない永遠の課題。親世帯の中には『家事の負担が大きい』『育児の負担が大きい』といった回答もあり、頼り過ぎたり、干渉し過ぎたりすると、なかなかうまくいきません。最初はよくても親世帯は年々高齢化し、体力的にも精神的にもきつくなります。必要な時に助けたり、助けられたりして、持ちつ持たれつで暮らすのがコツですね」

ダイワハウスでは二世帯住宅の基本となる3つのスタイルを提案している。住まいを完全に分離して、各世帯が独立した生活空間を持つ「分離同居」、玄関・リビング・キッチン・浴室など、生活空間の一部を共有する「共有同居」、二世帯がすべてを共有する「融合同居」。どのスタイルにするかは、各世帯の生活パターン、価値観、家計のあり方、将来のリフォーム計画など、諸々の条件によって異なり、親世帯が夫婦なのか、どちらか一人なのか、息子夫婦と暮らすのか、娘夫婦と暮らすのかによっても違ってくる。「事前に日常生活を細部まで突き詰めて考え、二世帯が膝を交えて十分に話し合うことが大切です」と村上さんは強調する。

【同居のデメリット】<親世帯> [1位]生活音が気になる 35.9% [2位]プライバシーが保てない 35.4% [3位]収納が少ない 31.1% <子世帯> [1位]プライバシーが保てない 61.7% [2位]友人や知人を呼びにくい 57.8% [3位]生活音が気になる 44.8%

編集協力 静岡情報通信

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