2014年度 税制改正要望に見る住宅税制の行方

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2014年度の税制改正要望が出揃い、住宅関連では、期限切れを迎える優遇税制の延長のほかに、「都市再興に向けた都市機能の整備のための特例措置」や「老朽化マンションの建替え等の促進」、「中古住宅流通・リフォーム市場の活性化」などで新たな減税特例措置などの創設を求めている。

中古住宅流通・リフォーム市場の活性化、老朽化マンションの建替えに注目!

去る8月27日、各省庁の2014年度の税制改正要望が出揃った。要望事項は各省庁からの予算要求と合わせてこの11月から12月に掛けて議論が交わされ税制改正大綱をとりまとめた上で、来年1月の通常国会に税制改正法案として提出される見通しだ。

住宅関連では、主なもので国土交通省をはじめ環境省、経済産業省などから新設や拡充・延長など国税・地方税合わせて44項目に及ぶ要望が提出されている。

この中で国土交通省は期限切れを迎える優遇税制の延長のほかに、「都市再興に向けた都市機能の整備のための特例措置」や「老朽化マンションの建替え等の促進」、「中古住宅流通・リフォーム市場の活性化」などで新たな特例措置の創設を求めている。

国土交通省の主な要望内容

I 安全・安心の確保と地域活性化

1.都市の魅力の向上・土地の有効利用の促進
  • (1) 都市再興に向けた都市機能の整備のための特例措置の創設(所得税・法人税・固定資産税)
  • (2) 優良住宅地等のために土地等を譲渡した場合の譲渡所得の軽減税率の延長(所得税等)
  • (3) 土地等の譲渡益に対する追加課税制度の停止期限の延長(法人税・所得税等)
  • (4) 相続税等納税猶予農地を公共事業用地として譲渡した者に対する利子税の免除

2.住まいの質の向上・無理のない負担での住宅の確保
  • (1) 新築住宅に係る固定資産税の減額措置の延長
  • (2) 老朽化マンションの建替え等の促進に係る特例措置の創設・延長(所得税・登録免許税)
  • (3) 認定長期優良住宅に係る特例措置の延長(登録免許税・不動産取得税・固定資産税)
  • (4) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡所得の課税の特例措置の延長
  • (5) 中古住宅流通・リフォーム市場の活性化のための特例措置の創設・適用要件の合理化(所得税)

II 成長戦略の推進

既存建築物の改修投資促進のための特例措置の創設(法人税・固定資産税等)

III クリーンで経済的なエネルギー社会の実現

認定低炭素住宅に係る特例措置の延長(登録免許税)

コンパクトシティの実現に向けて都市機能整備のための土地譲渡に1,500万円の特別控除

「都市再興に向けた都市機能の整備」では、コンパクトシティの実現に向けて、住居や生活機能の街なかへの誘導、空き地の集約化、空きビル等の活用推進のための制度の構築などにより、都市構造のリノベーションを推進するとして、移転誘導を図るための施策を打ちだしている。

この背景には、地方都市の人口の急速な減少がある。今後は拡大した市街地に住民が点在して居住することになり、生活機能の低下や地域経済・活力の衰退が見込まれることから、高齢者数の増加に対応した効率的な医療・福祉サービスを目指して、都市機能の集約を図るとしている。税制面での特例措置は図表1の通り。

都市再興に向けた都市機能の整備のための特例措置【図表1】

  • 都市機能を誘導すべき区域の外から内への事業用資産の買換特例→80%課税繰り延べ
  • 誘導すべき都市機能の整備の用に供する土地等を譲渡した場合の特例

(1) 居住用資産を譲渡し、整備された建築物を取得する場合→買換特例所得税100%
(2) 居住用資産を譲渡し、特別の事情により整備された建築物を取得しない場合の所得税
(個人住民税)の軽減税率 原則:15% (5%) →6,000万円以下10%(4%)
(3) 長期保有(5年超)の土地等を譲渡する場合
所得税(個人住民税) :軽減税率原則15%(5%) →2,000万円以下10%(4%)
法人税:5%重課→5%重課の適用除外

  • 都市機能整備管理法人(仮称)に土地等を譲渡した場合の特例

(1) 長期保有(5年超)の土地等を譲渡する場合上記(3)に同じ
(2) 当該法人の行う都市機能の整備等のために土地等を譲渡する場合→1,500万円特別控除

  • 都市機能とあわせて整備される公共施設、都市利便施設への固定資産税等の課税標準1/5控除(5年間)
  • 空きビルのテナント入替え等を行う場合に支払われる補償金の1,500万円特別控除

老朽化マンションの建替えで、区分所有権の譲渡に1,500万円の特別控除

「老朽化マンションの建替え等の促進」では、構造耐力(耐震性等)が不足しているマンションの建替えが喫緊の課題として特に対策が必要な老朽マンションについて新たな権利調整ルールを創設し、建替え等を支援、必要な税制特例を創設するとしている。

具体的には、転出者に係る特例として、区分所有者が組合に区分所有権を売り渡す場合の長期譲渡所得に係る軽減税率、譲渡所得の1,500万円特別控除。譲渡利益金額の5%追加課税分の適用除外、事業用資産の買換特例など所得税や法人税などでの軽減策を挙げている。

また施行者に係る特例では、組合の事業手続における区分所有権等の移転において登録免許税や不動産取得税の軽減などを挙げている。

予算で見る2014年度の取り組み(一部)※国土交通省予算概算要求の概要より

  • 中古住宅流通・リフォーム促進等の住宅市場活性化[80億円]

2020年までに中古住宅流通・住宅リフォーム市場を20兆円まで倍増させることを目指し、長期優良化リフォームへの支援、住宅ストック活用のための市場環境の整備等を促進する。

既存住宅の質の向上を図るため、リフォームした既存住宅を長期優良住宅等として評価する基準の整備と合わせ、住宅の長寿命化に資するリフォームの先進的な取組を支援する。
住宅ストック活用のための市場環境整備を図るため、消費者に対する相談体制の整備や、今後空き家の増加が見込まれる郊外型住宅団地における既存住宅の流通・活用に向けた取組等を支援する。また、適切な建物評価手法の定着を図るため、中古住宅・リフォーム市場と金融の連携強化を図る。

  • 老朽建築物の建替え・耐震改修等の促進[280 億円]

住宅・建築物の耐震診断・改修等に係る所有者の経済的負担軽減を図るため、支援措置の更なる充実等を行う。
既設の超高層建築物等の安全性を確保するため、今後想定される長周期地震動を踏まえた制震改修等に対する支援を行う。
南海トラフ巨大地震、首都直下地震等の大規模災害に備え、大量に発生する帰宅困難者や負傷者等への対応能力を都市機能として事前に確保するため、これらの者を受入れ可能な拠点施設の整備に対して支援を行う。
老朽化マンションの建替えを含めた再生事業が円滑に進むよう、専門家による相談体制等を整備するとともに、マンションの再生事業に対する支援を強化する。

編集協力 静岡情報通信

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