ひとつ屋根の下で、心地よく暮らす。理想的な二世帯住宅のつくり方
動線、収納、生活音対策などアイディア次第でぐんとよくなる。
二世帯住宅の設計にあたっては、固定観念に縛られないことが重要だ。ひとくちに二世帯住宅といっても、家族構成や家族の年齢層、ライフスタイル、個々のニーズによって千差万別で、各家庭にぴったりの二世帯住宅を自由に設計するのが成功の秘訣である。村上さんは次のように説明する。
「階段の上り下りが大変という理由から、一般に親世帯は1階、子世帯は2階と考えがちですが、1階より面積が狭い2階に多人数の子世帯が暮らすのは合理的ではありません。出入りが頻繁な子世帯が1階を使い、陽当たりと眺望のよい2階を親世帯が使う方が便利で快適だったりします。また、1階すべてを親世帯が使うには広過ぎる場合には、1階の一部を客間や収納スペースに充て、両世帯が共有することも。さらに生活音についても、水廻りの位置を上下階でそろえるとか、子世帯のリビングの真下に親世帯の寝室がこないようにすることで解決できるでしょう。入居後の不満をなくし、プラス面を高めるために、柔軟な発想で自由にプランニングしていただきたいですね」
分離同居は問題ないが、共有同居、融合同居の場合は動線にも配慮したい。玄関から直接リビングへアクセスできる「ゲスト動線」と、玄関から廊下を通ってキッチンや居室へ至る「ファミリー動線」の2つを用意しておくと、来客時にも安心だ。親世帯と子世帯で生活時間帯が大きく異なる家庭は、深夜に帰宅して安眠を妨げることがないよう、動線や寝室の配置にも気を付けよう。このほか、両親に介護が必要になった時のことを考えて水廻りを寝室の近くに設置したり、分離度の高い二世帯住宅ではインターホンを世帯ごとに付けたり、片親と一緒に暮らす融合同居の場合は親用のミニキッチンを設けたりすると便利。さらに、融合同居の場合は、洗面室と脱衣室を分離しておくとよい。だれかが入浴していても、扉を隔てて洗面台を使うことができるので、譲り合う手間が省け、気遣いも少なくて済む。
互いに気持ちよく暮らすには、プランニング段階から協力すること。
こうして見てみると、“案ずるより産むが易し”で、二世帯同居は思ったより受け入れやすい暮らし方だ。同居前はマイナス面ばかりが気になって二の足を踏んだ人も、意外にスムーズに溶け込めるのではないだろうか。間取りや設備で解決できるものはよいとして、入居後の光熱費や生活費の分担の仕方や、最低限守るべきルールについてもあらかじめ話し合っておこう。
「日常生活の細かいことを疎かにせず、一つひとつ両世帯が合意して決めることが大切。単世帯だったら目をつむることができても、二世帯ではなかなかそうはいかないのが現状です。お子さんやお孫さんの健やかな成長を全員で見守りながら、和気あいあいと幸せに暮らすこと。同じ時間を長く共有することで、家族を心から大切だと感じること。そのための二世帯住宅でありたいと私たちは願っています。弊社では今後もお客様一人ひとりの声に真剣に耳を傾け、多くのご家族に喜ばれる二世帯住宅をお手伝いしていきたいと考えています」と村上さん。家族みんなが満足できるベストなプランは十分な話し合いからスタートする。親世帯と子世帯がプランニング段階から一心同体で取り組めば、入居後の暮らしもきっとうまくいくに違いない。
編集協力 静岡情報通信